20250302 東淀川教会礼拝宣教要旨「発酵は神の恵みのわざ」出エジプト記12:39 マルコ4:30-33 ルカ13:20-21

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出エジプト記12章 39節
彼らはエジプトから携えて来た生地で、種を入れないパン菓子を焼いた。パン種がなかったからである。エジプトから追われ、大いにせかされていたので、道中の食料を自分のために用意する余裕もなかったのである。

マルコによる福音書4章 30-33節
また、イエスは言われた。「神の国を何にたとえようか。どのようなたとえで示そうか。(30)
それは、からし種のようなものである。地に蒔くときには、地上のどんな種よりも小さいが、(31)
蒔くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る。」(32)
イエスは、このように多くのたとえで、人々の聞く力に応じて御言葉を語られた。(33)

ルカによる福音書13章 20-21節
また言われた。「神の国を何にたとえようか。(20)
パン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨らむ。」(21)

宣教要旨「発酵は神の恵みのわざ」

イエスの時代には、過越の祭りの8日間をまとめて「種なしパンの祝い」とも呼んでいたようです。(ルカ22:1)この祭りの期間、発酵させていないパン生地を焼いただけのものを食べるからですが、理由は、紀元前1300年頃、エジプトの奴隷状態から脱出した「出エジプト」の夜、急いでいたのでパンを発酵させる時間がなかったことを思い出すためであり、パレスチナに国を持った後も、定着文化の恩恵に与りながらも、自分たちの民族的本質は、国境を超えて移動する、いわばアナーキーな移動の遊牧民(ベドウィン・ノマド)であることをこころに刻むためだったと思われます。

 イエスが“神の国”の比喩として、“辛子だね”の話をしています(マルコ4章)。使われているギリシャ語文字から判断すると、それは黒辛子というとても小さな辛子の実を採取できるハーブの一種で、成長しても1メートルほどの植物で、けっして鳥が巣を作るような木になることはないようです。ではイエスが語った小さな種は何を指していたのでしょうか。それはパン種の菌(イースト菌)であり、酵母であり、発酵のもとになる胞子、酒母のような菌、種を指していると思われます。

メソポタミヤやエジプトの都市文化ではかなり古くからビールやぶどう酒などの酒が造られ、パンのみならずチーズなどの発酵食品も造られていたようです。「腐敗」と「発酵」は紙一重で、特にお酒やビールなどの製造については、密造酒を作らせないためにも、発酵のための“種”の採取と保存、温度管理、雑菌の混入を避ける技術は各地の王様が部下に厳しく管理させ、許可制にしていたようです。ただ、パンやチーズのような食品については、それぞれの地方や地域や家庭で作り方を伝承し受け継ぎ、作っていたようです。

ルカ福音書13章に出てくる「神の国」の譬え話で、3サトン(36リットル)の粉(小麦粉)にパン種(菌)を混ぜて発酵させると大きく膨らむ、という話は何を伝えているのでしょうか。

イエスたちの活動は仲間たち、男たちばかりで、これに協力し支えていた女たちの姿は描かれていませんが、多くの女性達が病人の世話や食べ物の炊き出しなども行っていたと思われます。

多くの難民たちがイエスたちのところに集まってきて、彼らに対して、今日で言うところの“炊き出し”が何度も行われていたと思われます。「5つのパンと二匹の魚」がもとになって、大人の男だけで5千人、言い換えると5千の家族のお腹が満たされただけではなく、次の炊き出しのための食料までに膨れ上がった、という記事です。集まってきたそれぞれが自分たちの非常食まで全体のために提供した、という解釈がありますが、それだけではなく、様々な発酵技術を駆使した食べ物を女たちが作ったり、パンを膨らませていたと思われます。ルカ福音書の13章は炊き出しのための女たちの働きの一端が表れていると理解していいと思います。

発酵のメカニズムは神様が与えてくださった恵みであり、食べ物の発酵だかではなく、貧しい者たちが互いの助け合いで、人間関係も豊かに“発酵”する、そこに神の国が生まれる、というイエスのメッセージなのでしょう。

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