「津久井やまゆり園」をめぐって

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二つの“検証委員会”が立ち上がっている。一つは「津久井やまゆり園事件検証委員会」(平成28年7月26日に津久井やまゆり園で発生した事件について、事実関係を把握した上で、県や指定管理者である社会福祉法人かながわ共同会が行った対応について専門的な見地から検証し、今後の再発防止策を検討する。)メンバーは 東洋英和女学院大学人 間科学部人間福祉学科 教授、 弁護士、 神奈川県知的障害施設 団体連合会 会長、 神奈川県知的障害者施 設保護者会連合会 副会長、 神奈川防犯連絡会 会長で、事件の分析が始まっている。

もうひとつは、二〇二一年度に県内二カ所に分散移転を予定している、県の知的障害者施設「津久井やまゆり園」について、黒岩祐治知事が指定管理者を社会福祉法人「かながわ共同会」から見直す方針を示したことを受け、学識者らで構成する検証委員会が設置された。 メンバーは、委員長の佐藤彰一・国学院大教授、大塚晃・元上智大教授、野沢和弘・元毎日新聞論説委員。三人とも障害のある子どもがおり、障害者福祉などを専門としている。検証委は、同園での入所者支援の方法が適切だったか、不適切事案に対する県の指導は十分だったかなどについて検証するとのこと。 その初会合で、同園で本年度、入所者計二十五人に対し「車いすに固定する」「指が動かせない手袋を付ける」「居室に外から施錠する」などの身体拘束の疑い事例があったことが報告され、会合後、佐藤委員長は「居室施錠を二十四時間近く、数日続けている事例が二件あった」と話し、検証委はこれらが、やむを得ない身体拘束だったのかや、他にも入所者に過剰な投薬がなかったかなどを調べる、とのこと。
 事件だけがクローズアップされ、加害者と被害者たちの構図の中で、入所者のみならず施設や施設に人を措置している側が「被害者」として分析されていっては、事件に至るまでの加害者と施設との関係を含めた過程、施設そのものの問題性が抜け落ちてしまう。元職員だった加害者の眼に施設や入所者たちがどう映っていたか、何をどう理解したか、福祉の現場の“病理性”も明らかにされなければならない、と思う。

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