2020年8月30日 東淀川教会礼拝 イザヤ書6章 ルカ福音書22章 宣教題「汚れた唇の者なれど」宣教 金田恆孝

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イザヤ書6章5-10節
5 その時わたしは言った、「わざわいなるかな、わたしは滅びるばかりだ。わたしは汚れたくちびるの者で、汚れたくちびるの民の中に住む者であるのに、わたしの目が万軍の主なる王を見たのだから」。

6 この時セラピムのひとりが火ばしをもって、祭壇の上から取った燃えている炭を手に携え、わたしのところに飛んできて、

7 わたしの口に触れて言った、「見よ、これがあなたのくちびるに触れたので、あなたの悪は除かれ、あなたの罪はゆるされた」。

8 わたしはまた主の言われる声を聞いた、「わたしはだれをつかわそうか。だれがわれわれのために行くだろうか」。その時わたしは言った、「ここにわたしがおります。わたしをおつかわしください」。

9 主は言われた、「あなたは行って、この民にこう言いなさい、『あなたがたはくりかえし聞くがよい、しかし悟ってはならない。あなたがたはくりかえし見るがよい、しかしわかってはならない』と。

10 あなたはこの民の心を鈍くし、その耳を聞えにくくし、その目を閉ざしなさい。これは彼らがその目で見、その耳で聞き、その心で悟り、悔い改めていやされることのないためである」。

ルカ福音書22章52-53節
22:52
それから、自分にむかって来る祭司長、宮守がしら、長老たちに対して言われた、「あなたがたは、強盗にむかうように剣や棒を持って出てきたのか。
22:53毎日あなたがたと一緒に宮にいた時には、わたしに手をかけなかった。だが、今はあなたがたの時、また、やみの支配の時である」。

 宣教題「汚れた唇の者」なれど

 そのひとが知らない闇の向こう側で、公ではない「模擬裁判」が行われ、その人に対する、公ではない有罪判決(唇の汚れた者・罪人・○○差別者・ミソジニスト)が下され、「交ざると危険」とばかりにそのひとの名前やら罪状が闇の中で流布されていることがある。

 そのひとがひとたび口を開くと、その罪状故に“その目で見ず、その耳で聞こうとせず” 無視されたり揶揄されたり、更に影の向こうから石つぶてが飛んでくることもある。“裏”ですでに審判、判決が下されている「しるし」だろう。

 逮捕される場面でイエスが語った“毎日あなたがたと一緒に宮にいた時には、わたしに手をかけなかった”とは、神殿前など公の場や人々の中で、彼らがどれほどイエスやその仲間たちの言葉や行いについて苦々しく思っていたとしても、それについて議論したり、その罪を明らかにしようともせず、おそらくパリサイ派を先頭に、文字通り“闇の中で”、“多勢による逮捕”という、彼らが“正義”と信じて疑わない行為に対して発せられた言葉だったと思う。記者ルカは、それに続き「今はあなた方の時、闇の支配の時」と語るイエスを描く。

 21世紀はインターネットにおける文字や絵を用いた情報の発信・共有ツールが広まると共に、高速道路や一般道路におけるNシステム(自動車撮影システム)や防犯目的として一般道路でも自動ビデオ撮影が無制限に広がっていった時代。それらはいつでも国家による個人情報の管理、行動や人間関係の把握システムに変わり得る。

 キリスト教を少し振り返っただけでも、“サタン”を指定し、それと戦う自らの宗教(セクト)を絶対化し、敵と看做した相手と戦うことを“信仰”としてきた歴史は、十字軍や魔女狩り裁判を引き合いに出さなくても、現代も続いている。

 “自分たちこそが社会的弱者、被害者の側に立ち正義を執行する者”の自負を持ち、“敵”を裁く公的ちからを求め、自分たちの尺度で“有罪”を決め、自分たちのネットワーク内とはいえ、有罪者情報を流布する行為は、国家による、反国家・反社会的人物情報を収集する公安・警察と何ら変わることはない。

  過ちを繰り返さないためにもっとも必要なことは、それぞれの唇が汚れていることを前提に、互いが直接に出会い、互いの思いを交流させ、各々のセクト(立場や派閥)に依らず、その目で見、その耳で聞き、その心で何が本当の問題かを悟り、互いが固守する論理や姿勢を悔い改め、互いが天(神)に生かされる道を探ることしかない。そのための場として教会が用いられたらと願うが、“和解のための話し合い”の場を教会に求める文化はあまりない。

 たとえ各々が罵り合う、罵声を浴びせ合うことから始まるとしても、イザヤの、“我汚れた唇の者なれど”から出発し、セラフィムに唇を浄化されることを願えば、道は開かれると思う。が、今は“闇の支配の時”なのだろう。

先週の出来事

安倍首相が辞任表明。軍事大国で世界に覇権(ヘゲモニー)を強めてきた米国に対してこれまでのような親米従属関係の首相が選ばれるのか、米国従属から脱却し日本独自の道を探る首相が選ばれるのかが関心事ではある。

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