20220821 東淀川教会礼拝 宣教要旨「向こう岸へ渡ろう」マルコ福音書5章1ー15節

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本日の聖書箇所(聖書協会共同訳)
マルコによる福音書4章 35節
さて、その日の夕方になると、イエスは弟子たちに、「向こう岸へ渡ろう」と言われた。
マルコ福音書5章1ー15節
一行は、湖の向こう岸にあるゲラサ人の地方に着いた。イエスが舟から上がられるとすぐに、汚れた霊に取りつかれた人が墓場から出て来て、イエスに会った。この人は墓場を住みかとしており、もはや誰も、鎖を用いてさえつなぎ止めておくことはできなかった。度々足枷や鎖でつながれたが、鎖を引きちぎり足枷を砕くので、誰も彼を押さえつけることができなかったのである。彼は夜も昼も墓場や山で叫び続け、石で自分の体を傷つけていた。
 イエスを遠くから見ると、走り寄ってひれ伏し、「いと高き神の子イエス、構わないでくれ。後生だから、苦しめないでほしい」と大声で叫んだ。イエスが、「汚れた霊、この人から出て行け」と言われたからである。イエスが、「名は何と言うのか」とお尋ねになると、「名はレギオン。我々は大勢だから」と答えた。そして、自分たちをこの地方から追い出さないようにと、しきりに願った。
 ところで、その辺りの山に豚の大群が飼ってあった。汚れた霊どもはイエスに、「豚の中に送り込み、乗り移らせてくれ」と願った。イエスがお許しになったので、汚れた霊どもは出て、豚の中に入った。すると、二千匹ほどの豚の群れは、崖を下って湖になだれ込み、湖の中で溺れ死んだ。
豚飼いたちは逃げ出し、町や村にこのことを知らせた。人々は何が起こったのかと見に来た。そして、イエスのところに来ると、レギオンに取りつかれていた人が服を着、正気になって座っているのを見て、恐ろしくなった。


宣教の要旨「向こう岸へ渡ろう」
 ガリラヤ湖東南デカポリス(ヨルダン川の主に東岸の広大な地域に存在するパレスチナにおけるギリシアの10の植民地の町の総称)のゲラサ地方。各ギリシャ都市周辺に下層被差別社会が産み出されていた。神がエジプトの奴隷状態にある人々の悲しみと訴えを聞いたように、イエスもこの世のどん底にある人々の苦しみや祈りを聴いたのでしょう。

都市の墓場の隙間に住み、場合によっては鎖に繋がれていた精神障害者たち。イエスは固有な名を尋ねる。レギオンは記号と番号で呼ばれるローマ歩兵隊のこと。“固有の人間として扱われてはいない”という意味なのでしょう。人間はいくつかの人格が折り合いをつけて一つの人格を表現している、と言えます。例えば、男性的な人格も女性的な人格も、性格の異なった人格も一人の人の中にいます。

 発狂とは、多重になった各人格の折り合いがつかない混乱状態とも言えます。混乱・葛藤状態の病状を引き起こしている別人格と対話を重ねる。分離が進み「豚の群れに乗り移りたい」と別人格が願い、イエスはそれを聞き届け、それを命じられた、と理解できます。日本の「狐憑き治療」によく似ています。

 私事ですが、先日、岐阜県の郡上おどりに行ってきました。そこで偶然、近くの「円空記念館」を知り、円空さんの造った像に出会えました。そこで初期35歳頃の作品「天照大御神」像を見て感動しました。それは他の像にはない、男性像で目が墨で書き込まれ、見下ろしている眼でした。円空さんは木地師出身の修験者と言われています。木地師、サンカ、山の民、杣人、蝦夷とは、その多くがヤマトに敵対する者たちとして追われ、山の中の隠れ里、或いは北へ北へと逃れていった人々の末裔だったりします。そんな人々にとって、ヤマトの中心アマテラス大神は軍神であり、怖い男性イメージだったのでしょう。それが像から感じられました。


 郡上の修験者円空さん。35歳で旅に出発し、青森弘前城下を不審者として追われ「向こう岸に渡ろう」と北海道に渡ったのは1666年ですが、その前の1639年には本州から連行された切支丹106人が北海道松前藩城下で惨殺・殉教しています。円空が北海道を離れた2年後にはアイヌ人シャクシャインの戦いがありました。キリシタン弾圧・一揆・反乱の暗雲立ちこめる時代。修験者として活動を始めた円空は、追われ人のたどり着いた北のはて北海道に渡り、追われてきた人々やアイヌの人々と出会い、そこからヤマトを見据えながら、苦難を抱えている一人ひとりを助けるための像を、鉈と木っ端で造り、それぞれの必要に応じて手渡していった、と感じるのです。「イエス」と「円空」に共通の、「唯一のひと」「神の子」「仏性」に対する眼差しを感じるのです。


先週の出来事 
 安倍元首相の「国葬」を内閣が押し切ろうとしてる。事件によって明らかになった統一協会による政治家たちの利用、勝共思想の汚染問題に答えようとせず、死者への弔意を国民に強要し、様々な疑惑を儀式で封殺しようとしているように感じられる。


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