20240303 東淀川教会受難節第三主日礼拝 宣教題「ポジショニング・マウンティング」マルコ10章35−45節 週報2857

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聖書箇所

マルコによる福音書10章 35~45節
ゼベダイの子ヤコブとヨハネが進み出て、イエスに言った。「先生、お願いすることをかなえていただきたいのですが。」 イエスが、「何をしてほしいのか」と言われると、 二人は言った。「栄光をお受けになるとき、私どもの一人を先生の右に、一人を左に座らせてください。」 イエスは言われた。「あなたがたは、自分が何を願っているのか、分かっていない。この私が飲む杯を飲み、この私が受ける洗礼(バプテスマ)を受けることができるか。」 彼らが、「できます」と言うと、イエスは言われた。「確かに、あなたがたは、私が飲む杯を飲み、私が受ける洗礼(バプテスマ)を受けることになる。 
しかし、私の右や左に座ることは、私の決めることではない。定められた人々に許されるのだ。」
ほかの十人の者はこれを聞いて、ヤコブとヨハネのことで腹を立て始めた。 そこで、イエスは一同を呼び寄せて言われた。「あなたがたも知っているように、諸民族の支配者と見なされている人々がその上に君臨し、また、偉い人たちが権力を振るっている。 しかし、あなたがたの間では、そうではない。あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者となり、 あなたがたの中で、頭になりたい者は、すべての人の僕になりなさい。 
人の子は、仕えられるためではなく仕えるために、また、多くの人の身代金として自分の命を献げるために来たのである。」

宣教要旨「ポジショニング・マウンティング」

 イエスたちの神の国運動はいわば“(力も富も信用もない)貧しい者こそ幸い”な社会作りだったと感じるのです。運動が起こると誰が上か下か、組織的秩序・権力関係、社会的な影響力の大小などが意識され、セクトが生まれ、仲間たちを出し抜いてでも上下関係のポジション取リ(マウント取り)が図られる。天にまで届くバベルの塔が完成しそれを見た人々が唯一の王権を恐れ敬い、地上から権力争い、戦争はなくなる…という神話は文明と一体の幻想なのでしょう。
 世界支配を目論むナチスドイツが原子爆弾を手にする前に米国が持てば、ヒトラーも諦めるだろう、とアインシュタインがルーズベルト大統領に送った原子爆弾開発を勧める手紙が、広島・長崎に投下された原子爆弾を生み出したという見方もある。戦後、物理学者の学会で湯川秀樹氏に会ったアインシュタインは涙を流しながら日本に謝罪したと伝えられる。彼が核分裂・核融合の開発競争に明け暮れる西欧の物理学者の一人に送った手紙「神はサイコロ遊びをしない」と、応答の手紙「神でもないあなたが神の行いを決めるべきではない」が、これに携わる学者たちが感じていただろう「パンドラの箱」を開けることへの恐怖と、理論を真っ先に実験し実証したい学者の性(さが)のせめぎ合いが感じられます。
 独国・米国の原子爆弾開発競争の物理科学者たち(NHKバタフライエフェクト)
1920年代ドイツのゲッチンゲン大学物理学研究室
○ ヴェルナー・ハイゼンベルグ へのヒトラーの指示 原子爆弾開発計画に非協力。サボタージュ。1941年米国軍部はハイゼンベルグ暗殺を計画。未遂。終戦時イギリスM16に軟禁される。
○ ロバート・オッペンハイマー ユダヤ人 マンハッタン計画 ニューメキシコ州ロスアラモス国立研究所110㎢ エンジニア2500名職員1万名 二つの原子爆弾製作 広島長崎の実情を知り原子爆弾不使用意見を表明。「赤狩り」対象。水爆開発に反対し推進派の科学者と対立。
○ 仁科芳雄 帰国後理化学研究所仁科芳雄研究室によるサイクロトロン・原子爆弾開発(海軍・陸軍それぞれからの依頼)GHQにより研究成果は廃棄。
学者たちにユダヤ人、ユダヤ系移民がとても多い。ディアスポラとして迫害の中を生きてきた人々の強さと、現代のパレスチナにおけるイスラエル問題、ソ連のウクライナ侵攻、覇権争いの舞台裏で牙を磨き続ける最終兵器と、それに怯える現代社会。
人間の「知覚」に基づく「知的欲求」は限りなく広がろうとし、強者たる人間たちの欲求や便利のために利用してきた。精子や卵子すら冷凍保存し遺伝子検査の結果、望む時期に望む子供を望むかたちで得ることすら可能になりつつある。歴史を「人類の進歩」と捉える歴史観とともに失ってきた「神への畏れ」を取り戻すこと、最終兵器廃絶は可能なのでしょうか。パンドラの箱に残る「希望」を幻視したい。

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