20230514 東淀川教会礼拝説教「イエスとパウロのちがい」マルコ福音書10章 ローマの信徒への手紙3章5章 ガラテヤの信徒への手紙2章 担当 金田恆孝

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聖書箇所 

マルコによる福音書 10章 17−18節
イエスが道に出て行かれると、ある人が走り寄り、ひざまずいて尋ねた。「善い先生、永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか。」イエスは言われた。「なぜ私を『善い』と言うのか。神おひとりのほかに善い者は誰もいない。

ローマの信徒への手紙3章 10節
次のように書いてあるとおりです。「正しい者はいない。一人もいない。

ローマの信徒への手紙5章 18節
そこで、一人の過ちによってすべての人が罪に定められたように、一人の正しい行為によって、すべての人が義とされて命を得ることになったのです。

ガラテヤの信徒への手紙2章 16-17節
しかし、人が義とされるのは、律法の行いによるのではなく、ただイエス・キリストの真実によるのだということを知って、私たちもキリスト・イエスを信じました。これは、律法の行いによってではなく、キリストの真実によって義としていただくためです。なぜなら、律法の行いによっては、誰一人として義とされないからです。それでは、キリストにあって義とされることを求めながら、私たち自身も罪人であるなら、キリストは罪に仕える者となるのでしょうか。決してそうではない。

 

 

宣教要旨「イエスとパウロのちがい」

創世記に最初に出てくる「神の子」という言葉は、「神の子ら」で、増え始めた「人」を指しています。イエスが語ったのは、全ての人が「神の子」であるのに、人を「善い人」「善くない人」、「義人」「罪人」などに分けて“差別”している「義人たち」を攻撃していました。私見ですが、『あなた方は神の子に対してなんてことしてるんだ!』という言葉を投げつけていたと思うのです。

「罪人」とは、“自分は正しい・義人である”と思いたい人が、他の人を、穢れているとか律法違反だとか正しくないとか勝手に決めつけている言葉です。「義人」とは、他の人を、罪人だとか、正しくない人だとか決めつけて差別する人が、自分はそうではないと区別・差別するための言葉です。

 イエスは「善い」と言えるのは神だけで、全ての人は神の子であり、他の人と比べて「善い人」はいないし「義人」も「罪人」もいない、互いを神の子として許し合い、愛し合いなさい、と語りました。イエスの言葉は、小さな子どもにも分かる、一元的な“単純さ”に満ちていて、神を父ちゃんや母ちゃんと同じ「アッバ」と呼んだ、まさに「子」であるイエスだからこそ伝える神についてのメッセージが私たちに強烈に迫ってきます。

イエスの時代、「神の子」は、神から遣わされる特別な人、メシア、救世主を指す言葉として用いられていました。「イエスこそメシア・神の子」という期待や呼びかけに対して「私は人の子」という応答も多くあったと思われます。

 イエスの時代以前から、かなり浸透していたヘレニズム、善悪の二元論がありました。パウロはイエスとは直接会ったことはありません。パウロは“律法”によってのみ人は義とされる、善となるという「基準」を守るため、律法の敵を滅ぼそうとしていた人ですが、イエスの十字架に出会い、復活のイエスに出会い、“福音”に招かれ、いったん盲目となり、人生のリセット、「死と再生」に導かれました。

 パウロは自分自身の実体験をもとに、人は生来、“悪”であるという「性悪説」に立ち、イエスこそ人の生まれつきの罪に連帯し、自分の罪として滅ぼされることで、十字架で全ての罪を滅ぼし、人を神にとっての合格者、“義人”に再生させることのできる救世主・メシアとなったと語ったわけです。 イエスだけが私のメシア・救い主であり、他に救われる道はない、という一本の道を示したわけです。結果的に、このことは新たな「選民思想」を生み出したことになります。

 イエスの宣教とパウロの宣教の「差異」・ちがいを考え続けることは、今の「神の招き」を聴くことだと思います。

 

先週の出来事

ウクライナのゼレンスキー大統領とローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇とがバチカンで会談し、双方で「ウクライナへの人道支援を継続する必要がある」という認識で一致した、との報道がありました。「あらら」とため息。
 ローマ・カトリック教会の教皇が、戦闘状態にある国の代表者と会うのならば、戦争終結への祈りと、そのための対話が最も重要であり、両国への「とりなし」の努力もなされるべきだと思います。一方的な侵攻から始まり、今も続いている戦争であっても、一方への人道支援・援助という関わり方は、一方を裁き、目指すべき「和解・終結」を遠ざけると感じるのです。

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